栗塚旭・山本耕史 歴史トークショー

五稜郭

薄暮の五稜郭

昨日、五稜郭建造150周年・五稜郭タワー50周年記念に行われた、「栗塚旭・山本耕史 歴史トークショー」。

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ドラマで土方歳三を演じられたお二人が登場ということで、行こうかどうしようか迷っていましたけど、特に「大河ドラマ 新選組!」にハマってDVDも買っちゃったあの日の自分を思い出して、やっぱり行ってきました。途中10分の休憩を挟んで14時から16時までたっぷりとお話をお聞きすることができました。

山本さん演じる土方ももちろん良かったのは言うまでもないですが、あのドラマで一番良かったと思ったのは、新選組メンバーの輪というか絆というかそういうものが、本物の彼らと現代で演じているテレビの中の彼らとでシンクロしているかのような、そういう空気感でした。だからものすごく新選組を身近に感じたし、彼らの心情にものすごく入り込めたと感じています。

ですので、私は特にものすごく山本さんのファン、という訳ではないんです。でも、前述した大河ドラマの試衛館メンバーの雰囲気や、新選組!に関連する彼の発言などを目にすると、この「土方歳三」という役にどれだけの心血を注いでいたのか、そして周りのメンバーと共にあろうとしていたのかが非常に伝わって来るので、好意を持って拝見している俳優さんです。

さて、トークショーのお話です。撮影はもちろん録音もダメでしたので、おっしゃってた内容をリアルタイムでメモしたものとふんわりした記憶で構築されています。

こんな感じでお話されていたというのをうまくイメージできるようお伝えできればと口調を山本さんに寄せてます。一言一句同じではありません。もちろんそもそもメモされていないお話もたくさんあり記憶力もよろしくない頭なので、全てを網羅するものでは決してありませんので、ご了承ください。もし当日参加されていた方で内容が大幅に違うかも、という部分がございましたら、教えていただけたらと思います。

 俳優について

山本さんがやってみたい役は?と聞かれ、

こっちからは求めません。与えられた役をいかに演じることができるか、ということだと思うので。
役を自分に引き寄せるのと自分から歩み寄っていく、2つの方法がありますが、自分から歩み寄っていきます。

これには栗塚さんも、僕も同じです、と。

土方を演じることについては、

実在の人物を演じる際は、必ず「お前がやんの?」みたいな目があるんですよね。
もちろんそれはプレッシャーになりますけど、土方の場合はそれを蹴散らすくらいの役だったので、自分としてはとても演じやすい役でした。

栗塚さんも、

山本くんの言った通りで、演じているのは自分なのだからそれでいいんですよ。

土方歳三について

山本さん:

土方関連で日本全国あちこち行きましたが、場所によっては新選組にいいイメージを持っていない土地もありました。たとえば刀傷が残っていたりすると、「ほら、これ。君たちがやったんだよ。」とか言われたり(笑)
僕の祖父の祖父はあの板垣退助にお菓子を貰いに行っていた、と聞いたことがありますが、そういう感じで、150年前のことがまだそのまま生きているところもあるので、それは仕方ないかなと。

京都で屯所にしていた家の息子が隊士についていろいろ書き残していて、それによると近藤さんはニコニコ優しい、沖田は冗談ばっかり言って面白いなどとあるのに、土方については書いてない。だから、きっと土方は前面に出ることはなく、裏で隊士がうまく動けるようになどいろいろやっていたのではないか。逆に出ていったのは近藤さんが亡くなってからなんじゃないかと。鬼の副長から仏の土方へ。もともと優しい人だったと思うんですけど、前半は裏方だし近藤さんをたてるとか組織としてうまくやるとかそういう中で厳しさが出ていて。だから函館に来てからはすごく下の人たちからも慕われて、というのはそういうことだったんじゃないか。

(もし土方がそのまま生き残っていたらどうだったかという質問で)

土方はもう自分の時代じゃないことなど全てわかったうえで戦争をしていたと思うんです。それでも戦っていた。その死についていろいろな説がありますけど、実は土方が自分で撃たせたんじゃないかとも思ったり。敵側にスパイじゃないけどそういうのを作っておいて、撃たせたとか。死ぬ前にツケていたお米の代金とか全部綺麗さっぱり支払ってるんですよ。だから自分で死ぬって知ってて、自分が生きていたら時代が動かないっていうのも多分全部分かってたって(思う。だから、生き残っていたっていうのは考えられないなぁというニュアンス)

栗塚さん:

(もし土方がそのまま生き残っていたらどうだったかという質問で)全く別の仕事についてる気がします。ブラジルに移住して農園とか(笑) それまでの功績もなにもかもすっぱり切り捨ててね。

(土方を感じること)

山本さん:

土方を演じさせていただいてから全国あちこちのお墓やゆかりの場所に行きましたが、どこも結構ふわーっとした感じ。でも一ヶ所だけ「ここには絶対にいたわ!!」と確信できた場所があって。それは会津の山の中にある近藤さんのお墓なんですけど。近くにいる感じがしました。地元では掘り返してみようという人たちとやめようという人がいるらしいけど、もし掘ってみたら土方さんからの書だとか、羽織だとか、そういうものが絶対埋まってると思う!

栗塚さん:

今朝、湯の川のホテルで目覚めて雪景色の函館山を眺めた時、ああ、土方もこの雪景色を見ただろうなと思った瞬間、ふっとそばにいるようなそんな感じがしました。ふとそういう感覚になる時があります。(山本さんもうなづく)

 新選組!について

山本さん:

最初にお話らしきものをいただいたのは、「オケピ」のあたり。
5年後くらいにあけといて、みたいに三谷さんに言われて。
まだ全然大河の話は決まっていない頃。今から思うと、あれはこのことだったのか、って。

一番最初に撮影したのは第3話の道場破りの場面で、それを見ていた三谷さんに、
「耕史くん、緊張してる?」と。
「普段の耕史くんでいいんだよ。あのちょっと大人を馬鹿にしてる感じの、普段の耕史くんで」と言われて(笑)、ああ、そのままでいいんだと肩の力を抜いて演技するようになりました。(そのままって納得してる山本さんが面白い)

演技は基本台本通り。一度京都に行って戻って来たときの船で、近藤さんのお父さん、何だっけ名前・・・あのー、田中邦衛さんの・・・(客席に助けを求める山本さんw)ああ、そう、周助さん、セリフの所にね、書いてあるんですよ。「周助さんみたいに」って。(モノマネしてましたよね、劇中で)

近藤さんが斬首される時、何て言うかっていうセリフは三谷さんがずっと考えてたけど決まってなかった。現場に来て僕と香取君の様子を見ていて「トシ」しかないと思ったと。
三谷さんは本当に新選組が大好きで、自分をこのドラマに出会わせていただいた人。

新選組!の後半は、撮影中試衛館の仲間とワイワイやってて、これってきっと本人たちもこんな感じだったんじゃないかって思ってました。ずーっと一緒にいてね。だから、土方の最期の一日の撮影の時は、行く前は結構楽しみにしていたのに、実際撮影に行ってみたら試衛館のメンバーが誰もいないんですよね。もう寂しくて。だからもう早く一本木で死にたいなーと思っちゃってました。早く近藤さんやみんなのところに行きたいって。これ、土方さん本人もこう思ってたんじゃないかなぁ。 土方って鬼の副長って言われてたけど、会津から函館に来て仏の土方になっちゃってたでしょう。一番下の隊士にも優しくしたりとか。もうあの仲間には会えないから、だからもう別人に・・・。

こういうドラマのいいところって、いろいろ想像の余地がある所だと思うんです。よく言われたのが、近藤土方と坂本龍馬が江戸で会ったことがあるなんて、ありえないっていうことなんですけど。でもね、天然理心流と北辰一刀流の道場が近くにあって(ここで北辰一刀流を試衛館と言ってしまい客席から訂正されて焦る山本さん)、北辰一刀流の道場には山南さんもいて。そういう状態だったら、もし近くの道場にね強いヤツがいるってなったら、普通見に行きますよね?噂になりますよね?そういう面では今よりももっとそうなると思うんです。三谷さんも言ってましたけど、かわいい子がいるって聞いたらやっぱり見に行きますよね?って(笑) だから、史料に無いから記述されてないからってそれがすべてなかった、ということにはならないと思うんです。

だから時代劇ってとってもファンタジーですよね。もしかしたら・・・?という世界を作ることができる。例えば時代劇を演じるときは着物の襟をピッタリ合わせるけど、本当にみんなそうだったのかな?写真とか見ると、結構着崩したりもしてるでしょう?坂本龍馬だと袖から腕を抜いて写ってたり。実は、撮影での刀の置き方も僕の時代と栗塚さんの時代とで全く逆だったんです(刀を自分の横に置く時の刀の向き)。こんなに時代が近くても全く違うことがあるのに、150年前のことなんて今わかってることがすべてなわけはないですよね。

苦労したことはあんまりないですが、それまで着物で刀を振り回していても全く怖くなかったのに、土方が洋装になってからは何だかとても怖いなぁと思っていました。暴走族が刀振り回してるみたいな(笑)
それと、土方を演じている時は声のトーンを少し低めにしていました。

「新選組!」って、大河ドラマの中で視聴率は・・・だったかもしれませんけど、DVDの売り上げが1位なんですよね。それに、本編が終わった後に視聴者の声から続編が作られたのも他にないですし。それと以前、「モーツァルト」というミュージカルで元AKBの秋元才加さんと共演した時に、AKB内で新選組!がすごく流行っててDVDをみんなで回し見してるっていう話も聞きましたし、当時オンタイムで見てくれていた方々だけではなくて、そうやってあとからファンになってくださる若い方もいて、嬉しく思っています。

実は、八重の桜や竜馬伝のとき、NHKにいる知り合いから土方役で出てみたら?なんて言われていたんですけど、試衛館のみんながあってこその土方だから出ませんでした。土方歳三最期の一日で、試衛館のみんなが一回集まって撮影した場面、慎吾くんだけ出てないんです。何度も出てくれってスタッフがお願いしたけど、頑なに断ったって。自分はもういなくなっている身だから、そんな自分が出てしまうのは山本くんにとってよくない、もう出ちゃいけないからって。だからね、近藤さんがいないところで土方ヅラは出来ないなって。

(これからまた土方を演じるとしたら)

山本さん:

いろんなバージョンの土方ってどうですか。「僕、いいこと考えましたね、今。」(これはご本人の発言そのまま。少しドヤりながらの発言。ツボったのでメモ)
もしこうだったら・・・っていう。例えば土方は女性だったとか。まー写真残ってるんでそれは無いんですけど。(他にもいろいろ例をあげられてましたが、失念。)

栗塚さん:

まさか土方の兄の役をやるなんて思ってもみなかった。ていうか、お兄さんにドラマで脚光が当たるってなかったでしょう。
盲目だっていうし喋らないつもりだったんだけど、セリフもあるって(笑)

血風録の時は主役が決まりましたって聞いて、近藤だやったーと喜んでいたら土方で(がっかり)。土方はもう苦虫を噛み潰したみたいな表情で常にいるという悪人そのものというイメージで。当時はもう新選組なんてのは悪ですから。新政府軍にとっては敵ですから、今ではそうでもありませんけど、ずっと世間的にはそういう扱いだったんです。でも与えられた役ですからやってやる!と。

新選組!ではその中でも悪人として有名だった芹沢鴨が、悪だけではなくイイ兄貴分みたいな感じで描かれていたのが、本当に良かった。もし芹沢さんのご子孫がいらっしゃるとしたら、(これまでの評価とは異なる演出で)喜んだことと思いますよ。

よく映画を見るのですが、今公開している「フューリー」という映画は新選組!を思い出させるような映画でしたよ。若い仲間たちでね。ピットがまたいい役者に育って嬉しかったねー。いや、別に知り合いでも何でもないですけどね(笑) 誰でもいい役者に育ってくれると嬉しいんですよ。

 メモは以上です

展望台の土方歳三像

展望台の土方歳三像

きっと山本さんファンや栗塚さんファンの方々にとって、もっと有益なお話もあったと思うのですが、私が聞きたかったお話の主眼が新選組!と土方歳三だったので、このようなメモに。すみませんです。

新選組!放映当時に抱いていた感情が戻ってきて、本当に懐かしくなりました。それは、山本さんがTVや書籍で語られていた新選組!の仲間に対する思いが、10年経った今も何一つ変わっていないということを、余すところなくお話されていらしたから。局長愛みたいなものも相変わらずで。以前TVでも組!の忘年会をずっとやっているっておっしゃってましたし、ご本人もお話されてましたけど、同じ若い仲間同士の現実の試衛館メンバーと組!メンバーとで、本当に重なる部分が大きくて何だか切なくなってきました。

山本さんも栗塚さんも、本当にオーラがあって、もう最初はなんだか眩しくて直視するのが恥ずかしいというか・・・。栗塚さんはあの御年なのにとても張りのあるお声で、マイク有だとさらにそれが際立ってました。でも度々マイク無しでお話もされてて、横の山本さんは「マイク・・・持ってあげた方がいいのかな・・・いや、大丈夫か・・・?」みたいなお顔をされて一瞬手を出そうと動いたりなどしてました(笑) でもマイク無しでもほとんど聞こえていました。さすがです。

山本さん、最初ずっとお話してなくて、私も何だかほわーっと「あれ、本物なんだよな、本物だよな?」みたいにふわふわした感じで眺めていたのですが、お話した瞬間、あの声がズバーッと刺さってきて「うわーーー!本物だー!!喋ってるううううう!」みたいになりました(心の中で)。土方さんの喋り方や声も好きだったんですね、私って。自分のことなのに知らなかった。

山本さんはテレビで見るよりもお顔が小さくて、とーっても色白。おめめぱっちりんこ。もちろんスタイルも良くて黒いジャケットとパンツ姿でしたけど、ガッチリしてるのはよくわかりました。多分はいていらっしゃったと思いますが、靴下が靴に隠れて見えず、アンクル丈っぽいパンツでしたので、白い足首が見えていて、寒くないのかなーって余計な心配をしてました。鼻をすすられたり、咳やくしゃみもされてたので、もしかして風邪をひいていらしたかもしれません。寒い日でしたから、余計に心配に。

栗塚さんは本当に快活で素敵な紳士でした。血風録は未見ですが、うちの母が「今でいうイケメン俳優さ!かっこよかったんだからー!!」と興奮していました。札幌出身で、だけど土方役をやってからお仕事で初めて函館に来たと。現在京都にお住まいで、毎日映画を1本見るようにしているとおっしゃってました。

そうそう、今思い出しました。斬られ役で有名な福本清三さんの映画に土方役で出演されたそうで、最初は断ろうとしていたとのこと。「だって70越えの土方なんておかしいでしょ(笑) そしたら、障子の向こう側から影だけで映って、そこで障子ごと斬るって言われて、それなら俺じゃなくたっていいじゃん!って(笑)」 でも、最後にその斬った障子が倒れて姿が映るという演出だと説明されて、それならまあ出てやろうか、となったと。史上初の70越えの土方是非見て下さい、とのことでした。

ショーが終わってから、関係者のみなさんがステージ上で記念写真を撮影していらしたのですが、栗塚さんが手に唾をペッペッとして頭(髪ではない)を撫でつけてらして、本当にお茶目な方でしたよ。

こういったトークショーは初めてだったのですが、本当に行って良かったです。このイベントを企画して下さった五稜郭タワーさん、たくさん素敵なお話をして下さった山本耕史さん、栗塚旭さん、司会の丸藤さん、箱館奉行所館長の田原さん、ありがとうございました。

タワー展望台から函館山

タワー展望台から函館山