遭難寸前林道一人旅4


ということで、すぐに行動に移りました。

車は、置いていくことに決定。

今すぐにここから戻ります。

徒歩で。



早速こういう不測の事態に備えて持参していたチョコレートをポケットに挿し、

右手にサバイバルナイフ、左手に財布を持って出発しようとしました。

が。

私はなんとサンダルを履いてきていたのです。



馬鹿じゃないの、自分。

山行くんだろ、なんでサンダルなんだよ、ええ!?

不測の事態に備えてチョコレートまで持参していたのに、

なんでサンダルなんだよ!!




と思わず叫びましたね。

でも、私はまだ神に見捨てられていなかったのです。

車には不測の事態に備えて長靴を乗せていたのです。



えらいよ、自分。ちゃんと不測の事態に備えててさ。

やるじゃん、自分。先見の明があるよ。


でも不測の事態に陥る前にヤバいってことに気づいてほしかったけどな。



長靴を装着し、私はどんどん歩いていきました。

ただ、熊よけのものを何一つ持っていなかったので、

大きな声で「森のくまさん」を熱唱しながらです。

そのかいあってか、熊さんは登場しませんでした。

じりじりと照りつける太陽。

歌うのもつらくなってきます。

車では気づきませんでしたが結構なアップダウンのコース。

長靴によって蒸れてくる足。

しかも裸足。

だんだん擦れて皮がむけてきます。血も出ているようです。

が、止まることは許されません。

こんな山奥にいたら、

本当に遭難してしまいます。

だいたい、今日のこの冒険は思い付きだったので、

誰にも知らせていません。

このまま私が行方不明になっても、

誰も私の居場所を知らないのです。

なんとしても、人がいるところまでたどりつかなくてはなりません。



そういえば、ここで来る途中に軽トラックとすれ違ったっけ・・・。

もちろん、もう誰もいませんが。



ああ、畑にも軽トラックが停まってたなあ。

・・・・・・もういなくなってる・・・。



あ!トラクター発見!

・・・・・・壊れて捨てられたやつだよ・・・。



お!あの分岐点だ!

この看板何なんだよ・・・。お前のせいで迷っちゃったんだぞ。

(無茶したのは自分だが)

はあ、やっとここまできたよ。

もうすぐ夕方だ。4時過ぎだ。やばいぞ。

このまま誰もいなかったら、道道まで戻らなきゃなんないな。

とにかく、進め~!

注:すべてこのように大声で独り言を言いながら歩きました。

  歌も途中で疲れるし、息があがるしでやめました。



と、離農した農家の家が数軒あるところまで来ました。

来るときはここにテラノが停まってたんだ・・・。

頼むからまだいてください!

そう祈りながら進むと・・・。









いた!テラノだ!!











もう無我夢中で車に駆け寄りました。

すると、車のそばにおばさんが座っています。









もう、今となってはその時何をどうやって説明したか覚えていません。

私の様子を見て、おばさんはやさしく、



「まず何か飲むかい?

 缶コーヒーあるよ」








おばさんが天使に見えました。

あっという間にそれを飲み干し(水分はとってなかった)、

落ち着いておばさんに今の状況を説明しました。

そして、もし携帯を持っていたら貸してほしい、JAFへ連絡したいと伝えました。

そうこうしているうちに、横の川へ釣りに行っていた

おばさんのだんなさんと息子さんが戻ってきました。



私の話を聞いたおじさん曰く。







「だめだ、ここ携帯通じないんだ。」





「え・・・。でも、なんとかしてJAF呼ばないと・・・。」







「そんなもん呼んだらいくらかかるか知れねえよ。だめだ。」







「え・・・じゃあどうすれば・・・。」







「俺たちでなんとかしてみよう!」

「大丈夫だ、前にもこんなことあったし!」









うおぉ~!おじさん、かっこよすぎ!

なんていい人なんだ!