温泉成分分析表について

温泉の脱衣所に成分分析表というのが貼ってあるのを見たことがあると思います。あれは、温泉を知る上でもっとも信頼の置ける情報です。
源泉温度・湧き出し量・湧き出し場所・泉質・その他ほとんどの温泉情報が網羅できます。
ただし、これは大抵温泉をボーリングした時のものが多く、数年たって変化していることもあるので、いつの情報なのかを見極めることも大切です。
前述しましたが、源泉温度などは通常低下していることも多々あります。

ところで、温泉旅館なんかに『天然温泉』とか『源泉100%』とか書いてありますが、これは不思議な表示だと思われないでしょうか。
我々消費者にとっては「温泉」とは『天然で源泉100%』が当たり前のことだと思いませんか。これをわざわざ表示しなければならないということは、そうでない温泉も多々あるということを暗に示しているのではないでしょうか。
前述の2004年に起きた温泉偽装事件では、公正取引委員会が『源泉100%』や『天然温泉』の表示は好ましくないとの声明を出しています。

しかも、この「天然温泉」という表示は、現行の『温泉法』によって『温泉』と規定された温泉を利用する許可を受けた施設に掲げられている・・・という、難しい表示で、天然の温泉をどのように利用するかはその施設次第だというのです。つまり、そのまま温泉をたっぷり使っても、お湯で100倍にうすめようとも、『天然温泉』なのだそうです。
つまり、自分の家の浴槽に、温泉から汲んできたコップ一杯の温泉を入れれば、なんと不思議な!『天然温泉』の出来上がりなわけです。
また、「源泉100%」についても、これは自主的な表示ですから、100%の温泉水を2週間浴槽に満たしていても、それは100%だったりするわけです。
加水していない循環式の温泉なんかがよくこの言葉を使っていたりします。

また、泉質についても、現行の温泉法で定められた基準での泉質は表示されていますが、基準にギリギリ満たなければ温泉成分が含まれていてもにおいがしても色がついていても「単純泉」だったりします。
逆に言えば、現行法で規定されている成分が規定以上入っていれば「温泉」なわけでして、海の近くで穴掘って出てきた海水をあっためれば、(成分上は)立派な「食塩泉」になったりします(泉温の規定があるので海水は温泉ではないんですが)。
まあ、どの法律にも穴があるってことなんでしょうがね。

最近は情報化の波が温泉社会にも浸透してきたのか、さすがにこういう問題が軽視されなくなってきたようです。嬉しいことに、全国的に温泉協会などで新しい表示を制度化する動きも出始めているそうです。
平成15年には公正取引委員会が温泉の表示について、循環式か投げ捨て式かの表示を義務付けるように指導していくという方針を打ち出しました。うれしい限りですね。

昨年、全国の温泉や銭湯でレジオネラ菌による感染が話題になりました。ある施設はお湯を循環させてはいたものの、浴槽のお湯自体は2週間近くも変えていなかったそうです。
報道ではレジオネラ菌が発生した全国各地の浴槽が、投げ捨て式なのか循環式なのかは明らかにしてはいませんでしたが、どちらにせよこういった事件がおきてしまうことは温泉好きとっては悲しむべきことですし、不安になることでもあります。

函館市内のある温泉で「お湯は循環ですか」と質問したところ、「はい。ですが、湧き出し口からの水質検査で大腸菌発見数はゼロでしたよ。安心してくつろいでください。」とお答えをいただきました。
10000HIT企画でまわった温泉の中にも循環式の温泉もたくさんありましたが、レジオネラ菌の調査をし、結果安全だったことを証明して掲示している温泉もありました。
つまり、循環にしろ投げ捨てにしろ、その温泉のオーナーが、どんな方針で経営しているのかを知ることがよい温泉の見極める本当の方法なのかもしれませんね。