さて、昨日の続きです。





Mさんの

「もぅ。」

にぺろんぺろんにやられてしまったオイラは、

Mさんの事しか考えていなかった。




そう、史上最大の作戦、

「帰り際の告白」に向けての事。



人生の中で、告白をする回数って、何回ぐらいあるのだろう。

多い人もいれば、少ない人もいるだろう。



友北@は、決して多い方ではない事は確かだ。



しかも、

憧れの彼女の隣で告白の決意をし、

その日のうちに告白に向けて作戦を練るというような

シチュエーションを、

はたして何人が経験したといえようか。



とはいえ、告白のシミュレートなぞ、思春期の男であれば、

ほぼ毎日イメージトレーニングでこなしているといっても過言ではない。

今風に言い換えるなら、

バーチャルトレーニングとでも言おうか。



今こそ、その成果を見せる時が来たのだ。



すでに心の中でははじめてのデートコースまで構築済みだ。



そんなオイラの体は燃えに燃えまくっていった。

自分でも体温の上昇がわかるほどであった。



見る見る汗だくになっていくオイラ。



い、いかん。



自分も思春期だが、相手も思春期だ。



(事実ではあっても)汗っかきなどと思われては困る!!



答えあわせの時に、

Mさんの解答用紙が汗でねっぱろうものなら、

それは無条件武装解除を意味する。




目の前にあるデジタル寒暖計は20度を指していて、

暑いのは、いや、熱いのは自分だけなのはわかっていたのだが。



なんとかごまかさないと。



俺(小声で)「あ、あついね~」

Mさん(自分のルーズリーフにカキコ)[そうかな]



うひょ~~~~!

なんか親密度UP!?








真夏の夏期講習で、

プレハブの小屋にスシ詰め状態で入って勉強していたわけだが、

この塾、プレハブではあっても、

設備はしっかりしていて、

業務用の200ボルト用大型クーラーを装備していた。



外気温はその日ゆうに30度を超えていたことをはっきり覚えている。

室温はクーラー全開で20度を下回っていただろう。

しかし、そんな業務用クーラーでも、オイラの心までは冷やせない。

太陽のように燃える恋心は不滅なのだ。

クーラーと競い合うかのように汗が噴出していた。



が、



業務用を甘く見ていた。



見る見る室温が下がっていく中、

目の前のデジタル寒暖計が17度を切ったあたりで、

体に変調があらわれたのだ。



告白への緊張でかいた汗が、容赦なく体温を奪っていった。



さ、寒い。



いや、



正確には、

熱がこもっている感じ。



体の表面だけが冷え、体の中は熱い。



急激に冷やしたゆで卵みたい。





そして、時は満ちた。



夏期講習参加者全員が静かに問題に取り組む中、

その静寂を破って戦端が開かれたのだ。






ぐきゅるるるるるううううるるる







ここで、一昨日の日記を思い出して欲しい。



そう。



腹心の裏切りだ。



『い、いかん。

腹が冷えた・・・。なんとかしなければ。

最悪、Mさんにだけは知られてはいけな・・・』


ぐきゅるるうぐぎゅうりゅりゅうる

『くふぉは!』




オイラの周囲はすでにその音に気がついたようである。



当然、Mさんも真っ先に気がついた。

さすがに音が大きかったためか、かすかに笑っている。

どうやら、単に腹が減っただけと思ったらしい。



このまま何事もなく事が過ぎ去ってしまえばなんとかなるかも知れない。

夏期講習終了まで残りは40分だった。



しかし、腹心の裏切りはそれを許さない。



ぐぎゅるるるるうううう



さすがに3度目ともなると、その異様さに気がついたのか、

Mさん「だ、大丈夫?」

と声をかけてくる。



が、

おいらは戦闘の真っ最中。

完全な防衛戦。

答える余裕すらない。



敗北は即、社会的な死を意味する。



この時のオイラの格好は、

迷彩柄のアメリカ輸入品のうす~いTシャツ一枚。

生地はバンダナみたいなやつ。



外は30度を越える真夏日だ。

ごく自然な格好であろう。

だが、現在の状況は、

ベホイミを覚えずに竜王と対峙しているようなもの。



しかし、

負けられない戦なのだ。

Mさんへの告白どころか、

自分の人生をかけた戦いといっても過言ではない。





何度かの攻撃に絶えるうちに、

オイラは本能的にもっとも楽な姿勢をあみ出していた。



イスに座った状態で、

前かがみになり、

左手で腹を押さえ、

つま先立ちをし、

ふくらはぎに全身全霊を込め、

思いっきりケツの筋肉を閉じるのだ。



この体勢であれば、

体温の低下を極力防ぎ、

左手の体温で腹を温められ、

さらに最悪、肛門が限界を超えたとしても、

ぴっちりと閉じられた尻の肉が出口を作らず、

社会的地位の崩壊を防ぐことが出来そうなのだ。



しかし、この体勢には致命的な欠陥が存在した。



夏期講習を受けてる人の普通の姿勢って、





正しい姿勢




ですが、



おいらは、小刻みに震えて、

まるで生まれたての子牛のように、







ダメな姿勢




かっこわるいのだ。



さらに、

脂汗をひたひたと流し、

苦痛にゆがむ顔。



悶絶を悟られまいとするが、

全く無駄な努力だった。



自分が今生きているということを、

いやがうえにも感じさせてくれる「苦痛」が、

定期的に襲ってくる。



この地獄から逃れる術はただ一つ。

英語の難問に取り組む講習生が醸し出す、

凛とした空気が張り詰める中、

静寂を破って声を上げれば良いのだ。



「すいません、トイレに行かせてください。」



そう、

そうすれば、全てが解決する。

この苦しみからも逃れられるし、

社会的抹殺も避けられる



しかし、

それは、

決してあけてはいけないパンドラの箱。

講習生全員に

「ぼくちゃん、げりぴ~なのよ。」

と知らしめることになる。



もっとも、それでももらすよりは100倍もましだが、

それは本当に最後の手段。



だいたい、

パンドラがあけてしまった箱の中には、

希望が残されていたそうだが、

友北@の人生はそんなに甘くなかった。







だって、





間取り



赤がMちゃん。通路側がオイラ。



トイレから最も近い位置。

トイレから机まで

約2メーター。

隔てるのは

トイレの薄いドア

一枚のみ。


さらに

全員、

英語の難問に

挑戦中で、

すっごい静か。



・・・絶対聞こえる。









・・・断言しよう。



この状況下で、

「すいません、

トイレに行かせてください」

と言える奴は、

絶対いない!!





残された道は、

ただ耐えるのみ。










ええ、耐えましたよ。


脂汗が自分の体温をさらに奪っていくのを感じながら、

40分、フルラウンド戦い抜きましたよ。



戦いには負けませんでしたが、



人生の厳しさには完敗でしたよ。















走って家に帰ってトイレの中で、

素で泣きました。



中一の夏、

人生の厳しさを知った夏。







一昨日の日記を書きながら、

あまりにも鮮明に思い出されたもんで、

残しておきたくなったんです。



長々とお付き合いありがとうございました。


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