わたしを寿楽園に連れてって その1

私を寿楽園に連れてって

もう幾年も私の心から離れない近くて遠い憧れの場所がある。
その名は寿楽園。
「聚楽よお~~~」っていうCMが昔あったような気がするが、そっちではない。

ひっさびさの冒険まつり。
何だかタイトルの画像がアレな雰囲気だが、全くそのようなことはないので安心して続きをご覧ください。

寿楽園って?

寿楽園って何?という方のために、概略をご説明しよう。というか、私もこれ以上のことは知らないのだが。

私のバイブル「函館・道南大事典」によると、以下のように説明されている。

上磯町字当別の葛登支灯台の裏山にある秦家(島崎藤村夫人冬子の実家)の庭園。秦の別荘として知られる。冬子の姉浅子の夫秦貞三郎(紙問屋)が造営。大正10年(1921)貞三郎の還暦を祝う碑が建ち、藤村が「寿翁遺跡碑文」の一文を草している。(寿翁は貞三郎の号)。巌谷小波の「花長者水にも富める眺めかな」の句碑と共に現存。今は荒れているが、本州から名石を運び、大小7つの池にハスが咲き、洋風の建物があったという。

「上磯町」とはこの看板でおなじみの北斗市のことである。

また、「上磯町歴史散歩」にはこうある。

~昭和14、5年頃は花鳥風月を楽しむ人々の訪れが多く、賑わいも最盛に達し、函館の花柳界から遠出した芸者達が総出で遊んだという。~太平洋戦争が始まるとともに庭内も荒れ、戦後は一時期、原野に還るほどになった。近年、復興整備されつつあるが、往時の姿までにはもう少し時間がかかりそうだ。

「上磯町歴史散歩」には、庭園の大きな石造りの門の写真が掲載されており、緑に埋もれて朽ち果てようとしているかのようなその姿に、おいらのハートが打ち抜かれたのである。
この本の別のページには、先述の石碑についても写真入りで説明されていて、こちらも緑の中に鎮座する大きめの碑が目を引く。

写真をご覧になりたい方は、図書館で本を読んでみてちょ(多分もう絶版)。ちなみに、どちらも白黒写真なので、心の目で色を感じて欲しい。

何事も挑戦しなければ始まらない

あああ、見たい。まだあるのだろうか。日に日に思いは募るものの、正確な位置がわからない。
しかも、「上磯町歴史散歩」の発行年は昭和61年。今から25年も前だ。この写真から四半世紀を過ぎて、遺物がまだ残されている保証はない。それでも文学史上もっと注目されて良い場所が、現在埋没して自然に還るのを待つのみとなっているのは、やはり切ない。

悶々としていたところ、某氏に場所を教えていただいた。GoogleMapではすぐ近くまで道が続いている。これは結構すんなりいけるんじゃね?

しかし、一度目のチャレンジでは接近失敗。途中の道が思いの他荒れており、新車の1BOXで行った為だ。数年前に、寿楽園そばに新しい碑が建てられたというニュースを見ていたので、それほど荒れた道ではないだろうと予想していた。それに、5人家族で大きなチャイルドシートだから、移動には1BOXが便利なんだ・・・。寿楽園さんよお、あんたのこと甘く見てたおいらたちがバカだったぜ。

ということで、今秋テラノに小さめチャイルドシートをくっつけてリトライ。今日は旦那さまが運転だ。最初に断念した道は、両側の杉の枝が刈り払われていて、下草も綺麗になっており道の状態は良い。これなら1BOXでも行けたね、などと言いながら更に奥へ進む。

林が開けて十字路に出た。そこを越えて更に直進する。Google先生によれば、突き当りを左折・・・というか左に曲がる道しかなかったのだが、最奥まで進むと右へ抜ける道しかない。左は・・・あるにはあるのだが、見事な廃道だ。かろうじて4輪車の踏み跡が残ってはいるが、道の両側からはイタドリやら雑木がワルツを踊っている。道の奥がどうなっているのか、全く見えないほど生い茂る緑。

地図を見ると、廃道が目指す行き先なのだろうが、この荒れ放題の道を車で進むにはかなり覚悟がいる。確実に枝やら草やらで車のあちこちが傷ついてしまうだろう。かといって、車内に子どもたちだけ残して歩いていくわけにも・・・。と躊躇していたら。

「うおおお!いったらあああああ!」

寿楽園?への道

いいいいいっちゃうのおおお!?

いくら買って10年経ってるとはいえ、

そこそこ大事にしてきたテラノくんなのに、まじでかあああああ!

あああ、行っちゃったよこの人。

「当たらなければどうということはない。」

いや、当たってるってば。テラノくん傷だらけだよ。
だめだ、このニセ赤い彗星。

「もうあちこちガタきてるから、これが最後の冒険かも知れん。
こいつにも、最後に冒険らしいことをしてやらないとな。」

おおっ!なんかかっこいいこと言ってる!

「さすがテラノだ、何ともないぜ!」

前言撤回だコノヤロー!
あんた、ただガンダムネタ言いたいだけだろおおお!

寿楽園?への道 草だらけ

でも道はこんな感じ。

普通なら行かないレベルよ、コレ。

草の実やら葉やらがフロントガラスに降りまくり、サイドからは枝がキキイイイとボディを擦る音が絶えず聞こえる。

後部座席の子どもたちは、

「ギャハハハハ!木がすごいー!」

とっても楽しそう。

「木がよけてるー!」

とかトトロっぽく言ってみたりして。

いや、全く避けてませんけど。こっちが突っ込んでってるだけですけど。

って、これ、なかなかつかないよね。

周りも緑だらけで構造物も何も見えないし。

ただ、砂利道とはいえ道自体はしっかりとしているみたい。
でもいきなり大穴とか開いてたら終わりなのでそこは慎重に進む。

寿楽園?への道 草だらけっつーか枝

こういうときの時間って、経つの遅いよね。
もうずっとドキドキしっぱなし。
あの日の、あの暑い日の、スタックからの生還事件がどうしても頭をよぎる。

もし、何かに引っかかってスタックしたら・・・?

・・・いや、大丈夫だ。問題ない。国道からも近いこの場所なら、何かあってもすぐに誰かに助けを求めることができる。
最悪の事態を考えた上での冒険だ。
冒険とは、常に二手三手先を考えてするものだ。

こういう時、慌てた方が負けなのよね。しっかりしろ!君は強い女の子じゃないか!
などと、くだらない言葉遊びをしているうちに、目の前が突然開けた。

長いので、つづき!

»続きはこちら!「わたしを寿楽園に連れてって その2」

※ちなみに、写真は帰り道で撮影したもの。行くときは気持ちに余裕がなくて、写真のことをすっかり忘れていたのは言うまでもない。
なので、実際には目的地に向かって下っているのだ。

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『わたしを寿楽園に連れてって その1』へのコメント

  1. 名前:なりたり 投稿日:2011/12/04(日) 08:26:47 ID:62707fe5a 返信

    (笑)
    ガンダムネタ言いたいだけ…っても、やはりなかなかその道を車でつっこむのは勇者ですね(>▽<

    • 名前:ねりこ@ななめし 投稿日:2011/12/04(日) 11:27:37 ID:a48d77be7

      いや~まさかあの道を突っ込むとは思いませんでした。
      ガンダムの台詞はしょっちゅうお互いに言い合っているので、私も同罪なんですよ><
      なるべく早く続きをUPできるよう頑張ります。