今はぷかぷか浮いている島だが、昔は中の島といい沼の底にくっついていたという。
アイヌの人たちは沼が結氷すると氷の上にそれぞれ小屋を建て、氷に穴を開けてウグイを採っていた。
この小屋を、昼の間だけ使って夜は絶対に使わないという決まりがあったが、ある若者が禁を犯して小屋に一晩泊まってしまった。
いよいよ日が暮れだすと、静かだった空に雷鳴がとどろき、雨も激しく降ってきて、ついには竜巻がおきてしまった。竜巻は若者の仮小屋を巻き上げ、その若者はすぐそばの桂の大木にしがみついていた。そのうち竜巻は沼の中央の島を空高く巻き上げ、島は空中でぐるぐると回り始めた。
すると、沼の中から龍神が現れた。龍神が言うには、「この沼に何百年も住んでいて、この沼が窮屈になったので広い沼に移りたいが、その桂の木が邪魔になってどうしても出られない。今日も竜巻を起こし、その勢いで抜け出そうとしたが、やはりだめだった。桂の木を伐ってくれないか。」
若者は龍神の願いを聞き入れ、桂の木を切り倒した。すると龍神は天へ昇り、渡島南部の沼に引っ越していった。そして、以来中の島は浮島となった。
レポートと解説
浮島公園内の看板によると、このうぐい沼の龍神は道南の沼にお引越しをしたと書かれています。果たしてどこの沼にお引越しされたんでしょうね。他に龍神伝説のある沼といえば、函館の赤沼と大野の大石の沼ですが・・・。赤沼さんはちょっと小さすぎですね。
・・・と思いきや、昔は赤沼さんはもっと大きかったという噂も耳にしました。ということは、やっぱり赤沼さんにお引越ししたのでしょうか。
桂の木と龍神について
この「邪魔になった桂の木を切り倒して欲しい」という龍神(大蛇)のお話は、他の地方でも見られます。全くそっくりなお話が、積丹半島の当丸沼にも伝わっています。
ただ、結末は少し違っていて、木を切り倒すや否や暴風雨となり、川は氾濫。木を切った若者はそれ以来姿を消し、村人は龍神が召し上げたのだと噂したといいます。その後、当丸川が氾濫したことは一度もないというお話です。(「北海道おどろおどろ物語」より)
上ノ国町桂岡に伝わるお話は、桂の木を切り倒して欲しいと大蛇に頼まれるまでは同じなのですが、大蛇が外へ出るということは、大洪水が起こることだとして、木を切らなかったというもの。以来、桂の木は御神木として崇められているそうです。この桂岡のお話とそっくりなのが松前町「徳山大神宮の桂の木と大蛇」です。
上ノ国と松前に伝わっているお話はほぼ同じなのですが、部分的に上ノ国のほうが詳細だそう。
具体的には「大蛇が沼の中で千年修行をし更に海へ出て千年修行したいと言っている」こと、そして「その夢告は神官ではなく多くの村人が経験した」ことになっており、「その決定のために寄り合いまで開き、木を伐らない事に決定した」ということ。
以上を考えると、上ノ国の方が松前よりも古く、松前のものは上ノ国の伝説から伝播してきたものではないか、と「北海道の伝説/須藤隆仙著」では語られています。
※画像提供:桧山支庁
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